ある朝。  窓から差し込む朝日で目を覚ましたファリーは、隣に全裸の ょ ぅ ι゙ ょが眠っているのに気付き硬直していた。
(昨夜は別にヤバい事をした訳でもないし、酒が過ぎた訳でもないよなぁ。早寝をしたから寝惚けてもいないはずなんだけど――)
 呆然としつつファリーが幼女を見ていると、その気配に気付いたのか彼女はもそもそと起き、開口一番に
『ごしゅじんさまぁ〜』
 助けて! 僕は何もしていないよ!
 反射的に脳内で弁解の言葉をシャウトするファリー。
 別に何か悪い事をした訳ではないのだが、どうにも背徳的な何かが良心を鷲掴みにしている。
「――――なんで、僕がこんな目に」
 などと身に降りかかる不幸(特殊な趣向を持つ一部の人には幸運)を呪ったりしていると、扉がノックされた。
『朝ですよぉ、起きてますかぁ〜。扉、開けますよ〜』
 ちょっと待てッ! と言う暇も無く問答無用で扉が押し開けられ、ハルタワートが部屋に入って来る。
 そうすると当然、裸の幼女も視界に入ってしまう訳で――
『…………性犯罪者ですかぁ?』
「そのネタはもう出てる」
『失礼しましたぁ』
 彼女は頬をかき、溜息をつくと
『時空跳躍振動とそれに伴うタンホイザー効果を観測したんで何事かとは思っていたんですけど……変な精霊がワープアウトして来たようですねぇ』
「固有名詞の意味は分からないけど、このハタ迷惑な幼女が精霊だって事は分かった」
 確かによくよく見てみれば、髪から覗く幼女の耳の先は尖っている。ファリーがそれに気付かなかったのは、つまりは精神的な余裕が皆無だったという事だろう。
「と言うか、何の目的で来たんだい君は」
 すると幼女な精霊はにっこりと笑い、
『えーと、しょうわるな泉の精霊にたぶらかされたお人よしがいるらしいってはなしをきいたから、どーせならあたしのみりょくでメロメロにして――』
 言葉を最後まで喋る事無く、喉にハルタワートの地獄突きを受けてのた打ち回るハメに陥った。
『誰が性悪な泉の精霊ですかぁ?』
 あくまでも笑顔で言うハルタワートだが、あまりに容赦の無い攻撃をした後なので笑顔が余計に怖い。
「……と言うか、喉への攻撃は本当に危険だからよい子は真似しないでね」
『誰にコメントしているんですかぁ?』
 不信顔のハルタワート。
「ちなみに喉を攻撃するとヤバいのは、動脈が傷ついて喉の内側から血が溢れた場合、肺に血が流れ込んですぐに溺死するからだよ」
『そういう怪しい知識はいいですってば』
「左様で」
 と答えて、うめいている幼女な精霊を一瞥する。
「で、コレはどうしよう?」
『片付けましょうか?』
 ハルタワートの言葉に何か危険なニュアンスを感じたものの、同じ精霊族だし大丈夫だろう、と思い肯くファリー。
『はぁい、それじゃちょっと待って下さいねぇ』
 彼女は元気よくそう言うと、幼女を引きずってドアの外に出て行き――

 遠慮会釈無い爆音が響いた。

「なんだあ!?」
 慌ててドアの外に出ると、そこにはパンパンと手をはたくハルタワートの姿のみがあった。確かに爆発の音が響いたはずなのに、壁にも天井にもヒビどころか煤さえついていない。
「…………何したの?」
 恐る恐る尋ねれば、
『ちょっと超限空間力場を形成しただけですよぉ』
 という訳のわからない解答が帰って来た。



 結局あの幼女な精霊が何だったのか。それからハルタワートが何をどうやって幼女を片付けたのかは謎のままだったという。



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