艱難辛苦を主にアールマティの容赦ない毒舌で乗り切り、彼らは遺跡の入り口へと辿り着きました。
 二人は太陽を眩しそうに見上げ、それから大きく背伸びをします。
「ふー。二日ぶりの太陽だよ」
 オルムはランタンを片付けつつ、言います。アールマティはと言うと、人の気配に驚いて姿を隠す山猫をじっと見ていました。
「猫ー、猫だー」
 そんな光景を微笑ましく見守っていたオルム。しかし、
じゅるり
「……じゅるり?」
 自分は何か聞いてはいけない事を聞いたのだろうか。
 今の言葉の意味することが理解できない――もとい、理解したくなかった彼は反射的に聞き返していました。
 アールマティはと言うと、目をキラキラさせて
「うん、じゅるり。山猫ってちょっと肉に癖があるんだけど、美味しいんですよー。ナツメグを振って野菜と混ぜて焼いたら……。じゅるり」
 などと、のたまっています。
 オルムはたっぷり一分ほど考えた後、口の中で「ゲテモノ食い?」と呟きます。
 いかなる耳の仕組みなのか、それを聞きつけたアールマティは山猫を見つめたまま答えました。
「違うよー。ゲテモノじゃなくて珍味ですよー」
 と。
 まだ見ぬ何処かの食文化に思いを馳せ、「あー……。まぁ、人生いろいろ! ってことで……」などと呟いているオルムを尻目に、アールマティはそろそろと山猫に近付きます。
 ゆっくりと間合いを詰め、慎重に得物の木の棒を構え……
「あいや、待たれよ」
 突然山猫は制止の声をあげたのですが、彼女はそれに構わず木の棒を振り下ろしました。

 
ごいん。



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