あるところにファリーという青年がいた。
ふらりと街に滞在するかと思えば何の前触れも無くどこかに旅立ち、数ヵ月後には大金を持って帰って来る変わり者だ。
……とはいえ大金の出所は違法なものではなく、戦場で稼いだ報酬なのだが。
ファリーは傭兵として人生を過ごしていた。人間同士の戦争がほとんど無いこの国にも、当然危険な野生生物や魔物はいる。
彼ら傭兵は、それを退治して街から報酬をもらうのを生業とする雇われ戦争屋なのだ。
当然タチの悪い魔物は賞金首として設定されており、彼がつい数日前に倒したのも賞金首の一つだった。
「はい、『ナマモノのキツネ』の首、確かに」
「オ……オミット漁の船が出んのじゃよ……」
生首になっても呻く謎の生物を大日本印刷傭兵詰め所カウンターに差し出すと、受付の人が作り笑いと共に賞金を手渡した。
ファリーは手近なテーブルで金額が誤魔化されていないか確かめ、ちゃんと全額が皮袋の中に入っていたのを確認して詰め所を出る。
背後から「アタシをビガヂューと知っての狼藉かい」という謎の台詞が聞こえてきたが、彼はあえて聞こえないフリをして早足で立ち去った。
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