2002年2月24日(今日は4月24日)
「ふもたろう(1)」

 むかし、むかし有るところにおじいさんとおばあさんがすんでいました。
「……ウェーバー軍曹ちょっと物陰まで来てもらおうか? 今すぐに」
「あらぁ、あたしは跳ねっ返りの坊やは嫌いじゃあ無いわよ? はっはっは」
 お、ちょっと何を、うおっ待った、待った! あくまで『お話』なんだから穏便に!? 

 (SE:ゴン、がん!)

 ってえ……何も拳銃の台尻で殴ること無ぇだろーが、ったくよぉ。
 歯が折れるかと思っちまったい……とと、話の続きだ。

 苦み走ったシブい魅力のアンドレイ・セルゲイヴィチ・カリーニンおじさまと母性的な優しい微笑みが素敵なペギー・ゴールドベリおばさまが住んでいました。

 ある日のこと
 おじさまは山へ芝刈りに、おばさまは川へ洗濯に行きました。
 おばさまが川でおじさまの黒いビキニパンツを洗濯していると上流から大きな『ふも』がどんぶらこ、どんぶらこっこと流れて来るでは有りませんか!
 『ふも』はまるまると肥え太り、脂もたっぷり乗ってそうで如何にも美味しそうです。
「ふもっふ」
 そんな『ふも』と目があったおばさまは言いました。

「あたしゃいしゃだからね、そんなふえいせいなものはもってかえってたべたりしないよ」

 『ふも』は何かいいたそうですが川の流れが先日の大雨のせいで増水し流れが速くなっていたためあっというまに下流へ押し流されてしまいました。
 おばさまは段々と小さくなっていく『ふも』を少し名残惜しそうに見つめていましたが、やがて洗い終わった洗濯物を抱えて家路につきました。
 余談ですがおじさまはその頃、足柄山で熊の様にゴッツイラグビー部員にまたがりチェーンソーを振るう初老の金太郎と血みどろの戦いを繰り広げていました。

 急流に押し流されていく『ふも』
 やがて海にでると潮流に乗り三日三晩、波の間を漂った挙げ句、メリダ島……もとい鬼ヶ島の砂浜に流れ着いてしまいました。



「むう、こまった、おとももなしにいきなりおにがしまにたどりついてしまった」
 『ふも』の中から這い出したさがらぐんそうはゴーグル型のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)に表示されたGPSの座標を確かめると微妙に困った様に呟きました。
 何しろここは鬼ヶ島、辺りには高度な電子装備を備えた4間4尺は有ろうかと言う鋼鉄製の鬼がうろついています。
 いかに『ふも』の耐弾性能が優れていようと鬼の金棒から発射される40mm砲弾を食らえばひとたまりもありません、いえ、頭部の12.7mm重機関銃弾でもちょっと厳しいかもしれません。
 「ともかくはらごしらえをするか」
 何しろ三日三晩飲まず食わずのさがらぐんそうです。
 いくら厳しい訓練を積んで多少の空腹や喉の渇きから耐えられると言っても今から困難なミッションを遂行するのはやはり厳しいのです。

 幸い砂浜を掘り返せばたくさん貝がとれますし、辺りには椰子の実が転がっており、磯にはまだまだ釣り人にスレていないお魚がうようよ居ます。
 さがらぐんそうはまずコンバットナイフで椰子に穴をあけ喉をうるおすと流木にナイフをパラシュートコードでくくりつけ銛を作り魚を突いてほかくしたり、ナイフをスコップ代わりにして砂浜から貝を掘り出しました。
 流木をナイフで細かく裂くと医療キットのアルコールをかけてマッチで流木を燃やし、魚と貝を焼いて食べました。
 流石は腕利きのようへい鮮やかなさばいばる技術です。
 
 さがらぐんそうがしょくごの一休みをしているとなにやらぶさいくなさるが近づいてきます。
「ふもたろうさん、ふもたろうさんお腰につけたやまぶきいろのおまんじゅう一つわたしにくださいな」
 なぜか猿の台詞にやる気が見られません。
「ふっふっふ、しおばら屋よ。ぬしもなかなかの「ワル」よのう?」
 ふもたろうことさがらぐんそうも何故か台詞が棒読みです。
「いえいえおだいかんさまにくらべればわたくしなどまだまだです」
「こいつめ、いいおるわい」
「はっはっは」
 どちらかというと元ネタがももたろうというより「桃太郎侍」みたいなやりとりです。
 嫌ですね、汚いオトナの取引は。

「ときにクルツよ?」
 あん? なんだソースケ。
「なぜやまぶきいろのおまんじゅうだとワルになるのだ?イエローケーキとかそう言う意味の隠語なのだろうか?ぶつぶつ」
 いいから演技を続けろって。
「しかし、妙では無いのか?たかがまんじゅうをもらっただけで生死をかけて鬼と戦うなどと考えられん」
 うるせぇっての。時代劇の定番ネタだよこの戦争ボケ男。
「まったく忙しいのに時間を割いてやってると言うのに……君たちの様な体力しか取り柄のない君たちと違って僕は指導者なのだよ? 自らの分という物をわきまえてあまり僕を煩わせないでくれたまえ」
 ……このクソ猿は鬼の手先って設定にして始末しちまうか?
「了解した」



 なんと猿は鬼の手先でふもたろうを陥れようとしたためメリダ島の波打ち際に首だけ出して埋められてしまいました。
 「ご免なさい、ご免なさいもう言いませんから掘り出してうわっぷぷぷ、ぺっぺ、な、なんか徐々に潮が満ちて来てる!? た、助けてぇごぼぼっ、げ、っげほ、ごぼん」
 どのみち駒岡学園生徒会長の塩原等というたいそうな肩書きでも短編集を読み返さないと誰だかいまいち思い出せない程度のキャラですのでこの後どうなろうと知った事じゃあ有りません。

 非道な鬼の策略から辛くも脱したふもたろうは再度『ふも』を着込んだ一路鬼の本拠地に向かいます。
 ふもたろうが藪をマチェットで切り払い道無き道を進んでいると前から雉がやってきました。
「ぽにー」

 雉じゃねえ。

「ふもっふ、ふもふも。ふもー」
「ぽにぃぽにぽに」
「ふもっふもっふもっふ」
「ぽにぃ……ぽにーぽにー」
 いや、何を話してるかわからねえって。
「ふもっ! ふぅもふぅも、もっふふ」
「ぽにぽにぽに!」
 お前らナレーターそっちのけで意気投合するなよ。
「ふもふも、ふもっふ」
 だ・か・ら人類に解る言語で喋れテメェら!



 ……なんだか良く解らないうちにお供の『自称(推定)雉』をお供にくわえたふもたろう。
 そもそも一般人には存在すら秘密のメリダ島になぜ塩原やぽに男がいるのかその辺どうなっているのでしょう?
「あのー、もしもし?」
「ふもっふふもっふ」
「ぽにぽに」
 しつこいぞ、お前ら
「わたしに対する描写がさっきから全く無いのですが……」
 って、うわっなんだアンタどっから湧いて出たんだ!?
「ふもっふ!?」
 いいから『ふも』から出てこいソースケ。ほらチャック開けてやっから。
「ふう、それにしてもあんたは何者だ?何処かで見た覚えは有るのだが」
 いぶかしげに顔を傾げるふもたろう。
 これでようやくナレーターに戻れます。
「ふもたろうさんのお供の犬です。猿の塩原君が出てきたときからいますが描写を全て省かれちゃったのです」
「む、それは失礼をした。ではこれから俺達は鬼の成敗に出かけなければならないので失礼する」
 ふもたろうはそう言って犬に別れを告げると、自称(推定)雉と共に鬼のアジトへと向かいました。
「はい、さようなら……って置いていかないでくださいよー!」
 そう言うと誰が誰だかさっぱり解らない犬はふもたろう達の後を追いかけ、未開のジャングルへと消えて行きました。

 次回予告!

 紆余曲折を経てついに鬼の本拠地へたどり着いたふもたろう一行!

「ふもふもふもっふ(とは、言ってもあの後二分しか経っていないがな)」

 鬼の悪辣極まりない攻撃によって一人、また一人と倒れていく仲間達。

「ぽ、ぽに(ふもたろうさん、僕の事には構わず鬼達を倒してこの銀河に光を取り戻して下さい……さあ、振り返ってはダメです。貴方は戦士なのでしょう。さあ、この伝説の剣を持ってあの黒水晶をうち砕くのです。そうすれば鬼の回りの魔法障壁は消えますから。でも油断しないで下さいね、あの鬼は所詮影武者本当の黒幕は第七星系の暗黒宙域に潜んでいます、そこへたどり着くにはスコーフィールドの街から東へ海沿いに行った岬のほこらの地下に隠された伝説の光翼船を手に入れなければなりません、その船の起動キーはマクミラン神殿の神官が……ぐ、ごほぉ)

 俺の知らない間に一体何が有ったんだぁ!?

 そして神秘のヴェールに包まれた鬼の総大将の正体が明らかに!!

「私は犬ですが私の正体は誰かも判明しないうちに死ぬのですか!?」

 次回、ふもたろう(2)でお会いしましょう。

語り:クルツ・ウェーバー軍曹


2002年2月25日(実際の日付は4月26日)
「さらばふもたろう! 戦士達の黄昏、〜銀河覇王伝説編最終章〜」
「虚偽の報告は厳罰だぞ? クルツ」
 いいじゃねえかタイトルくれぇ大風呂敷広げてもよ。
 そういうわけで「ふもたろう(2)」の開始です。



 いきなりですが鬼達が仕掛けたタールトラップに犬が落ちてしまいました。
「ああっ、あんまりです、まだ私が何者かも解らないのに!?」
  蛇足ですがタールトラップとはその名の通り地面に深さ2〜3m程の穴を掘ってタールをなみなみと注ぎ込みます。
「あうあう、説明してないで助けて……」
 その上に枯れ葉や草を敷き詰めて巧妙にカモフラージュして上手く敵をおびき寄せます。
 うっかりトラップの上に乗ったが最後、足を取られて徐々に体はタールの海に沈み込むこととなります。
 このトラップの非情な点は罠にかかった者がすぐには死ぬことが無いと言う所。
 もがけばもがくほどその体はタールの沼に沈み、いたずらに体力を浪費するだけ浪費して
「しかし、このような稚拙なカモフラージュでトラップに引っかかる者が居るとは思えん」
 と、ふもたろうが言うように確かにまともな訓練を受けた兵士で有ればここまで稚拙なカモフラージュでは真夜中でもないとまず引っかからないでしょう。
 真っ昼間からこんな所に落ちるとしたらそいつは相当な間抜けです。
「大きな……お世話っ、ですっ! それよりもは、早くた、助けてくださーい」
 犬はタールの中に首までつかりながら必死ではい上がろうとしますが上半身が抜け出すよりも先に引力に従って粘性の沼に絡め取られてしまいます。
「も、もうダメ……どごぷぉ、ち、力が……ぼごん。ごぷぉ」
 既に頭の先まで真っ黒に染まりつつ、タールの沼に沈みゆく犬。
「ふむ、後2分と言ったところか?」
 まるでアリ地獄に落ちたアリでも観察するような冷静な目で呟くふもたろう。
「ぼぼむ、どぼ……べちゃねっちょり」
 タールの沼からは犬の右腕が付きだしてむなしく虚空を引っ掻くばかり。
 やがて、手首から上だけが突き出す頃になると指先もぴくりとうごかなくなり、そのままゆっくりと犬はトラップに全てを飲み込まれて消えました。
 その光景を確認するとふもたろうは何事もなかったのようにお供の自称(推定)雉を連れその場を後にしました。
 おそらく、ふもたろうは先日行われた倫理の小論文であまり良くない評価を犬に下されたのが不満だったのでしょう。
「何故貴様がそれを知っている!?」
 先日ふもたろうが東京に居るときマデューカス中佐が掲示板に貼り出していたからです。
「むう、機密漏洩の罪で軍事法廷にかけられないだろうか?」
 今日はいつになく殺伐としているふもたろうでした。


今日は何かと有りましたので次回に続く(汗)
 


2002年2月26日(実際の日付は4月27日)
「ふもたろう(3)」
 いくたもの難関を乗り越え、鬼達の奸計の前に一人、また一人と倒れていく仲間達。
 大きな代償を払いながらもついに鬼の居城へとたどり着いたふもたろう一行。
「ぽにぽに」
 なにかがやってくるのに気付いた自称(推定)雉がふもたろうを呼びます
「む、どうした?」
 茂みの中で鬼達をおびき出すブービートラップを仕掛けていたふもたろうが姿をあらわすと自称(推定)雉の指さす方向を物陰から見つめました。
 みると鬼の居城の門が開き一つの影が姿を現します。
「鬼か!?」
 ふもたろうは物陰で素早く『ふも』を着込むと鬼の尖兵を迎え撃つために息を殺して待ちかまえます。

「ッチェブラァァァァァシカッッ!!」

 ……えー、その何だ?
 くまさんのようでおさるさんにも見えるふしぎなどーぶつ。

 WOWOWでフルメタル・パニック! を見ていない人には絶対に理解できないギャグです。

「ふもふも?(なんだあの奇怪な生き物は」
「ぽに?(さあ?)」
 ひそひそと小さな声で話合うふもたろうと自称(推定)雉。
 いい性格です。
 一体何様のつもりでしょうか?
 己が姿を鏡に写したことが無いのでしょうか?
 そんな2人のやりとりを知ってか知らずか、チェブラーシカはのたのたとおぼつかない足取りでこちらに近づいてきます。
 チェブラーシカはふもたろうが藪の中に仕掛けたブービートラップへ向かってずんずん進んできます。
(もう少しだ、もう少し近づけば……)
 固唾をのんで見守る2人。
 しかし……
 
 ずるべたーん!

 あまりにもわざとらしい効果音とともにコケるチェブラーシカ。
 ロシア語で「ばったり倒れ屋さん」という意味の名前が付けられるだけの事は有ります。
 いまこそ、トドメを刺すチャンスですがふもたろうのへいしとしてのほんのうがそれをおしとどめました。
 いい判断です、下手に袋だたきにしたら来月の給料明細がそれはそれは恐ろしいことになっていたことでしょう。
 なんとかチェブラーシカの着ぐるみが立ち上がって去っていくのをやり過ごしてからふもたろうたちは鬼の居城へ侵入を図りました。

(続く)


 今回も終われませんでした(吐血)


2002年2月27日(4月28日)
「ふもたろう(4)」
 一体何が楽しいのかふもたろうも第四回。
 精神的に追いつめられてる時に限って笑いをとろうと身を削るのは如何な物かと思います。

「それはいいがこの状況はどうにもならんのか?」
 ふもたろうが疲れたような声で言います。
 眼前には、灰色に染まる鋼鉄製の体躯もおどろおどろしい立派な角を生やした大鬼。
 アニメ版のM9、電子装備を強化された隊長機です。
≪おーほっほっほっほ、覚悟しなさいふもたろうたち! アンタらはこれから大鬼のアタシに頭からガリガリ囓られるのよっ!≫
 M9のスピーカーを通してノリノリで叫ぶマオ姐……もとい大鬼。
 『ぶん!』と空気を唸らせて得意げに長大な単分子カッターを振り下ろしています。
「困った、俺の手持ちの火器は12番ゲージのショットガンが最大の火器なのだが……」
 ふもたろうは途中武器弾薬をアンドレイおじい……おじさまとペギーおばさまの元で補給するつもりがアテが外れて見放されてしまったため十分な準備が出来なかったのです。
≪うらー、さっさとそこに並ぶっ! 最初は馬で次はボン太くん、最後はクルツ! あんたの番よっ。ふっふっふ三人とも美味しく食べてあげるからねぇ、けっけっけ≫
 邪悪な哄笑を上げる彼女の『食べる』が意味している所が気になりますがどっちにしろあまり楽しいことにはならないような気がします。
≪『どっちにしろ』とはどういう意味よ!?≫
 うわ、あぶねぇ、本気で振り下ろしてきやがった!?
「では、クルツ。後は頼んだ、この隙に俺達は鬼の頭領をしとめに行く。さらばだ」
 ふもたろうたちをそっちのけで単分子カッターをナレーター振り下ろしてくる大鬼。
 このままではふもたろうはみんなの見ていない場所で大活躍してしまいます。
 それよりもっ、それよりも俺はこんなところで死ぬつもりは無ぇっ! わっとと。
≪逃げるなクルツ! 待ちなさーい≫
 待てと言われて待つ馬鹿が居るかー!



「ふふふ、よくぞ来たふもたろうよ、しかし、貴様の命運も最早これまで。ここが貴様の墓場となるのだ! うわーはっはっはっは」
「やはり貴方が鬼の頭領でしたか中佐殿」
「くくく、驚いたかね? 軍曹。私は貴様に引導を渡すため本来ならば鬼の頭領として予定していた小暮教諭を暗殺し、ここで待ちかまえていたのだ」
「ぬう、あんな熱心な指導教官を暗殺するとは。中佐殿には軍人としての誇りが無いのですか!」
「訳の分からぬ事をほざくな! 私はあの男の卑劣な策略によって縫い針混入下剤入りイナゴパンを食わされて危うく死ぬところだったんだぞっ! バナナとラズベリーを口に詰め込まれたくらいで窒息するほうが悪いんだ!」
「ぬう、いくら上官といえども許すわけにはいきません! 貴方にはしかるべき法の裁きをうけていただく!」
「来るがいい、サガラ軍曹。いや、ふもたろう! 英国紳士のエスプリの効いたブラックユーモアをお見舞いしてくれるっ! 喰らえっ、イギリス製穀物酢のかかったフィッシュ・アンド・チップス!」
「もぐもぐ、ぐふっ、不自然に脂臭い上に舌を刺す酸っぱい味。これがイギリス人の味覚だと言うのかっ!? まさにブラックユーモア!」
「うるさい、満足な食生活も送ってこなかったゲリラ上がりがっ、いいか? 本当のジョンブルとは食い物の味ごときでうだうだ文句を言ったりしない物だ! 東京での軟弱な食生活で堕落しおって、いいか、第二次大戦中はロンドン空爆で物資が欠乏していたときなど我々はアメリカ軍が輸送機から投下する塩辛くて薬臭いスパイスド・ポーク・ハムだけでしのいで来たのだ! つまりSPAMメールとはそういうどーしょーもない物を延々と送り続ける行為の事を言うのだ! 解ったか? 解ったらサーと言え!!」
「く、流石はイギリス人。そこはかとなく人種差別の匂いのするジョークをあっさりブチかましてしまうとは」
「どうだ、これが英国人の度量の広さだ!世界に先駈けて工業化を進め、一度自然を滅ぼしかけたぐらいではへこたれたりはしない、当時は川の匂いがあまりにも酷いので国会が開催されない程だったのだぞ!」
「むう、笑って良いのか悪いのか判断に苦しむ。しかも、台詞ばかりだと読みにくい」
「まったくだ、ナレーターはなにをぐずぐずしておる」
「ぽにぽにー」
 ぜぃぜぃ、や、やっと振り切れた……
「む、クルツ、まさか逃げ延びたとは」
 いやー、途中で小さい抜け穴があってさあ、うまいことそこに飛び込んでここまで逃げて来たんだよ。
「抜け穴だと?」
 む、コホン、ナレーターの仕事を再開しないとな。
「まて、抜け穴とはどう言うことだ?この基地にそんな物が有るはずが……」
 しつこく食い下がる鬼の頭領、嫌ですね、脂ぎってシツコイ中年親父はネチネチネチネチと。
 とにかく俺が抜け穴に飛び込むとそこは若い女の子の部屋みたいだったんだけど姐さん……じゃねぇ大鬼がライフルの銃口突っ込みやがったんで慌ててこの部屋まで逃げて来たんだよ。
「そんな……まさか……」
 わなわなと震え出す鬼の頭領。
「か、かんちょおおおおおおおおおっ」
 もしかしたら便秘なのかもしれません。
「ぽにぽにー」
 突っ込むなよ、オマエも。
 どうせこのオッサンの事だテッサを軟禁してソースケに合わせないようにしようと企んだんだけど壁に穴開けられて逃げられちまったんだよ。
「するとやはりあの妙な着ぐるみが?」
 ボン太くんの分際で相変わらず身の程をわきまえないふもたろうです。
 今頃、チェブラーシカは東京目指して太平洋を泳いで渡っている事でしょう。
「彼女は泳ぎが得意なので問題は有るまい、むしろ心配なのは本土に上陸してからだろう」
 いくらなんでもそりゃ無茶だろうというつっこみが帰ってきそうなお話です。
「仕方があるまい、かくなるうえはこの基地もろとも貴様らをふっとばしてやる!」
 あっというまに捨て鉢になる鬼の頭領、ふもたろう大ピンチです。
「ぽに、ぽに」
「うおっ何をする!?」
 なんという事でしょう、ここまで全く役に立たなかった自称(推定)雉がいつの間にか鬼の頭領の背後に回り込んでいるでは無いですか。
 どこからともなく取り出したブラシと針金で鬼の頭領の頭を梳かし、ぽにぃてーるに結い上げようとする雉と、命がけで阻止しようとする鬼の頭領。
「そう言えば……」
 ふもたろうがぼそりと呟きます。
「中佐殿のあの噂はやはり本当なのだろうか?」
  ん?あの有名な噂か?
「そうだ、なんでも中佐の毛髪には有る重要な機密が隠されていてそれを暴こうとした者は全て秘密裏に抹殺されるという噂だ、一説によるとグェンやダニガンも秘密を知ったため消されたというのが真相だと言われている」
 ……あの2人を倒したのは俺らじゃ無かっただろうか?
「そうだったか? うーむ、どうでもいい奴らだったので良く憶えとらん」
 それはさておきふもたろうそっちのけで死闘を繰り広げる鬼の頭領と自称(推定)雉。
 その攻防は一昼夜の間繰り広げられました。
 少女でも無い、苦虫を噛みつぶした様な顔をした親父を相手に一体何が自称(推定)雉の情熱を駆り立てるのか?
「ぽにぽにぽにぽにー!」
「ぬぅうおおおおおおお!? 私は負けぬ。この頭髪は死んでも触らせぬぅううう!」
 なんだかなぁ……あれじゃあ頭髪に秘密が有りますって自分で宣言しているようなもんだ。
「ぽに男はきっと真実が知りたい、その一心で戦ってるんだろうな」
 『ふも』の中から完全に這い出し、すっかり傍観者を決め込んでいるふもたろうが悟った様に言いました。
 すでに誰が主人公だったか完全に忘れた様です。
「このままだと時間の問題か?」
 ふもたろうが言う通り逃げ回る鬼の頭領は目に見えて動きが鈍ってきました。
 やはり両手で頭を押さえながら防戦一方だったのと、なにより自称(推定)雉との経験の差が如実に現れたのでしょう。
 そのことを考慮に入れると今まで良く耐えきったと言うべきです。
 やがて疲れ果てた鬼の頭領の毛髪に自称(推定)雉のブラシが吸い込まれます。

 ぽとり

「おお!?」
 やった、ついに自称(推定)雉がやりました! 予想通りの結果が待っていたとは言え大殊勲です!
「むう、しかし何故中佐はあれくらいのことでムキになって隠そうとするのだ?」
 ふもたろうはまぶしそうに鬼の頭領の頭皮を見つめながら呟きました。
 人という物は本来あるべき筈の物が無いと無理に隠してしまい、それが却って可笑しくも無い物を可笑しく見せるという事に繋がるのです。

「くっくっく、見られたからには仕方有るまい」
 鬼の頭領が不敵に嗤います。
 目から血涙を溢れさせるほど悔しかった様ですね。

「そうだ! 私こそがこの物語の真の主人公!! その名も気高き『不毛太郎』だっ」



 ヲヤヂギャグです。
 これだけ引っ張って寒いオヤヂギャグ……
「あ、こら貴様らっ、人が恥を忍んで告白したとゆーのに侮蔑するとか嘲笑するとかあきれ果てるとか凍り付くとかどやしつけるとかせんのか!?」
「い、いえ、しかし、それではあまりにも……
「ぽに……」
 優しい目で鬼の頭領改め不毛太郎を見つめる2人、その目には今にもこぼれ落ちそうな涙が……
「こ、こら本気で同情するな、余計に惨めでは無いかっ、それに馬! そこの雉とか言い張る馬! 貴様かぶり物のくせに目に涙をためるな! ああ、ウェーバー軍曹までっ!?」
 そこにはなけなしのプライドを粉々にうち砕かれたちっぽけな男。
「言うな、それ以上言わないでくれぇ……」
 誰に彼を責めることが出来るのでしょう? 誰が彼を笑えるのでしょう?
「うう、酷い、あんまりだぁ……」



 こうしてふもたろう達一行は悪い鬼を完膚無きまで打ちのめし、平和を取り戻し帰ってきました。
 多大な未解決の問題を放り出し…… 


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